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「今も残る昔の面影 vol.2」  史蹟史料部所属 歴史友の会(2023年2月号)

31 Jan 2023

 


 御覧の通りマリーナベイエリアの写真からも分かるように、目覚ましい変貌を遂げたシンガポール。前回に引き続き、変貌の中にあって、今もなお違う形でシンガポールに残り続ける面影を追っていきます。今回は、日本に関係のある場所を中心に紹介します。


 第二次世界大戦後、1942年2月15日〜1945年9月12日まで日本が統治していた時代もありますが、古くは1862年山本音吉が日本人として初めてシンガポールに定住したことを皮切りに、戦前から多くの日本人がこの地を訪れ、定住しました。日本人会元事務局長杉野一夫さんに伺った話や、史蹟史料部歴史友の会諸先輩方が発行している資料から、現在のブギス周辺、ミドルロードを中心にかつて日本人街が存在していたことがわかります。今回紹介する建物の多くもこの地に根付いた日本人と大きく関わっています。


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Annex (アネックス) / Furama Riverfront Hotel (フラマ リバーフロント ホテル)


 1972年、シンガポール初の日系百貨店として、伊勢丹がHavelock RoadApollo Hotelの一部(4階建ての丸い建物)を使用し営業を開始しました。伊勢丹は1993年に現在のオーチャードのShaw Houseに移転しました。


 写真のIsetan(Apollo hotel)は1999年に改装工事が行われ、Novotel Apolloと改名されました。2004年にFurama Hotels International Managementに経営が移管され、現在はFurama Riverfront Hotelとして営業しています。


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Thomson Plaza Shopping Mall  (トムソン プラザ ショッピング モール)


 ヤオハンは1974年にPlaza Singapura開店した当時、シンガポール最大のスーパーマーケット兼デパートでした。ピーク時には、カトン(1977〜1983年)、Thomson Plaza(1979〜1998年)、ブキティマ(1981〜1996年)、ジュロン (1983〜1997年)、パークウェイパレード(1983〜1997年)など多くの店舗を構えました。1998年にThomson Plaza店を最後に完全撤退しています。Thomson Plazaは2019年末からMRT Upper Thomson駅側に新しいエントランスを設ける等、大改装し、今も建物が残ります。


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BHG (Bugis Junction) (ブギス ジャンクション)


 1995年、Parco Bugis Junctionはブギスストリート、マレーストリート、ハイラムストリートの3つの通りにあった古いショップハウスを改築し、西友を含むInter Continental hotel、映画館、200軒以上の複合施設として完成しました。2005年、Parco HoldingsParco Bugis JunctionCapitaLandに売却。同時に西友もBHGに買収されました。現在敷地内には、19世紀前半にこの辺りに住んでいたブギス族の帆船「phinisi(ピニシ)」のロゴや、もともとここにあったHylam st.などの標識が残されています。


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Stamford Arts Centre  (スタンフォード アート センター)


 日本人学校は1912年に補習校としてミドルロードの東洋ホテルの一室を借りて開校しました。日本人小学校は1920年にジャパンクラブの支援を受け、現在のWaterloo Streetに校舎が完成。1931年、建物の右側に3階建て校舎が拡張され、敗戦まで多くの児童が学びました。


 1988年から今日までStamford Arts Centreとして使用されるまでは、イギリス兵のための仮保養所、Gan Eng Seng SchoolStamford Primary School等として利用されていました。


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CanningHill Square & Canning Piers  (キャニングヒル スクエア&キャニング ピア)
※2024年完成予定


 1984年1月にWuthelam Groupと大丸が共同で開発した大型ショッピングモール「Liang Court」は、River Valley Road添いにありました。この建物には紀伊国屋、カラオケ、家電量販店等60以上のテナントが入り、1984年11月からはホテルニューオータニとサービスアパートメントLiang Court Regencyが上層階部分に入るなど大いに栄えました。


 2003年、大丸は明治屋に、ホテルニューオータニはAccor Hotelsにそれぞれ引き継がれ、ホテル名はNovotelに改称されました。 2010年代には、紀伊国屋書店、ユニクロ、やよい軒、サイゼリヤ、浅野屋等多くの日本企業が入っていました。


 2019年11月にCapitaLandCity Developments Limitedと共にMarriott Internationalが運営するホテル、サマセットサービスアパートメントや小売店が入る複合施設を建設すると発表され、2021年8月に完全に取り壊されました。


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Raffles City Shopping Centre  (ラッフルズ シティ ショッピング センター)


 シンガポール最初の学校であるRaffles Institutionの跡地に、建築家I.M.Peiによって設計され、1986年に開業しました。


 開業当初Westin StamfordWestin Plaza HotelSOGOデパート等が入っていました。SOGOは2000年10月に閉店してしまいましたが、2001年からRobinsonsMarks &Spencer、地下にはJason‘s Market Placeが開店しました。


 新型コロナウイルス(COVID-19)の流行により閉鎖され、現在はRaffles CityBHG百貨店による合弁企業、One Assemblyが経営しています。
また、SOGOParagonTampines1にも支店を持っていました。


 


出典1:「The Fall of Singaporep.22
出典2:写真提供;藤田 彦四郎
出典3:https://www.roots.gov.sg/Collection-Landing/listing/1211492 (閲覧日:2020年12月)
出典4:https://www.pinterest.jp/pin/505036545706656609/ (閲覧日:2020年12月)
https://www.dbs.com/media/features/thomson-plaza-home-to-one-of-the-first-pet-shops-in-singapore.page(閲覧日:2022年1月)
出典5:https://mapio.net/images-p/6159726.jpg + https://www.todayonline.com/singapore/new-covid-19-cases-aug-26-2021(閲覧日:2022年1月)
出典6:「選り道 in Singapore」 12B
出典7:https://www.straitstimes.com/business/japanese-fashion-label-lowrys-farm-closing-down-5-other-japanese-names-that-failed-here
 https://www.nas.gov.sg/archivesonline/photographs/record-details/88d801c5-1162-11e3-83d5-0050568939ad(閲覧日:2021年11月)
出典8:https://www.straitstimes.com/singapore/environment/canninghill-piers-to-be-tallest-building-along-singapore-river-slated-for(閲覧日:2021年11月)
出典9:http://isisis.cocolog-nifty.com/i/2005/11/post-2c30.html閲覧日:2022年1月)


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文責・写真:史蹟史料部歴史友の会
伊地知ふゆ彦・由美子


 

「今も残る昔の面影 vol.2」  史蹟史料部所属 歴史友の会(2023年2月号)